賃貸経営における入居者の残置物撤去についての自力救済方法と判決事例
賃貸借契約の解約後に入居者が残置物を撤去しない場合、賃貸オーナーはどのように対処するべきでしょうか。
今回は田上博也弁護士(弁護士法人 一新総合法律事務所)より、賃貸経営における残置物撤去〈自力救済〉についての法的な基礎と注意点を伺いました。ぜひご参考にしてみてください。
自力救済の法的な基礎
〈自力救済〉とは
自分の権利を侵害されたときに、裁判所に頼らずに自分で救済することです。
自力救済は、社会に存在する紛争のすべての解決を裁判所が引き受けることができない以上は一定の範囲で認められますが、その範囲は極めて限定的です。
賃貸オーナーによる残置物への対応
賃貸オーナーが入居者の残置物に対して、無断で処分したり損壊したりすることは、入居者の所有権を侵害する不法行為となります。場合によっては器物損壊罪などの刑事罰に問われてしまう可能性もあります。
以下の裁判例においても、賃貸オーナーと入居者との間で入居者の所有物の搬出の合意を部分的に無効としたものがあります。
自力救済の判決事例
本件の賃貸借契約書には、下記の条項がありました。
「賃貸借終了後、賃借人が本件建物内の所有物件を賃貸人の指定する期限内に搬出しないときは、賃貸人はこれを搬出保管または処分の処置をとることができる」
事案の概要
賃貸オーナー:入居者の賃料滞納を原因として契約を解除。
本件建物の入口扉に錠を取付け、その後本件建物に存在した入居者所有の動産類を搬出処分。
入 居 者 :違法な自力救済であるとして損害賠償を請求
裁判所の判断
契約書中の規定内容は、本件建物について賃借人の占有に対する侵害を伴わない態様における搬出、処分(例えば、賃借人が任意に本件建物から退去した後における残された物件の搬出、処分)について定めたものと解すべきであるとして、入居者がまだ居住しているにも関わらず、残置物を撤去してしまうことは認められない。
※ 東京高裁 平成3年1月29日判決
まとめ
前述の事例から見て、賃貸オーナーが入居者の残置物を撤去する際には、まずは入居者に対して退去後の残置物の撤去を求めるべきでしょう。
あるいは下記のような対応を行うことが望ましいと言えます。
・賃貸オーナーの費用負担で残置物撤去を行うとの通知書を送付
・残置物の所有権を放棄して撤去されることにつき異議がないことについて入居者と合意書を取り交わす
・客観的に残置物撤去の許可を得たことの書面を残す
いかがでしたでしょうか。
賃貸経営を行う中で入居者の退去時の問題として残置物が出てしまうケースは少なくありません。適切な対応方法を知って、適切に対処する事が必要です。
株式会社フレンドホームでは、管理を受託する事により、賃貸経営における賃貸オーナー様の負担を軽減するお手伝いをしてます。
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